【Interview】日比谷OKUROJI
空間の魅力~グッドデザイン賞受賞の秘密を探る~
グッドデザイン賞受賞OKUROJI探訪イメージグッドデザイン賞受賞OKUROJI探訪イメージ
2020年9月、有楽町駅―新橋駅間の鉄道高架下にオープンした商業施設「日比谷OKUROJI(ヒビヤオクロジ)」は高架下の新たな姿を表し「高架下、変わったね」と大きな話題となりました。今もなお現役で残るレンガアーチと東海道線、東海道新幹線の高架橋の構造を生かして作られた空間は、2021年度グッドデザイン賞を受賞しました。
今回、開発に携わった大場おおば智子ともこさんの現地案内で、グッドデザイン賞受賞のポイントや開発エピソードを伺いながら、デザインの視点から日比谷OKUROJIの魅力を探りました。
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100年前に誕生、
そして次の100年につなげる
日比谷OKUROJIの魅力を、開発に携わった大場さんはこう語ります。
「『100年前に誕生、そして次の100年につなげる』という方向性のもと、プロジェクトがスタートしました。開発前の高架下は、薄暗くネガティブなイメージが多い場所でした。そこを単に改修するのではなく、貴重な100年以上前のレンガや高架橋の美しいアーチを生かした空間にしよういうという前提で開発を進めました。新しい建築はできるだけ簡素化し、マテリアルを限定して、高架を浮かびあがらせるデザインとなっています。この場所は、銀座、有楽町、新橋、日比谷の間にある都心の一等地ですが、高架下であることで洗練されている中にも、親しみやすさがあると思っています。」
光の魔術により回廊を再生
日比谷OKUROJIがグッドデザイン賞を受賞したポイントの一つは「効果的に設置されたライト」によって生まれたアーチの空間です。入口から入ってまず目にするのは、半地下に広がるアーチ。優しく温かい光に包まれた空間は、入口から想像される以上の広さを感じます。この回廊の美しさに、思わず立ち止まってカメラを構える通行者もしばしば。この回廊の再生について大場さんが開発当初を振り返ります。
「一般的な上から下へのライティングではなく、高架橋に向かって下から上に照射し光を拡散させています。特に曲線部分をいかに美しく見せるかに苦慮し設計士が細部まで微調整を続けていました。さらに高架橋は鉄道建築なので、たくさんの制約を守りながらデザインを追求しました。」
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歴史的な空間を活かし全体が
調和されたデザイン
グッドデザイン賞受賞のもう一つの評価ポイントは「歴史ある特別な高架下空間を活かした全体の調和がとられたデザイン」です。千代田区観光協会の渡辺美樹さんもそこが魅力だと話してくれています。
「この新しい建物の中に100年前のレンガがそのまま残されているところがいいですよね。古いものを大切にしながら、新しいものがつくれているところがよいです。」
また、日比谷OKUROJIが絶妙のバランス感を保っている一つの理由が、あえて作られた余白。都心の一等地といえば空間の許す限り店舗を詰めるところですが、あえて余白を設けてあります。広場や公道への通り抜け部分に作られた空間は、休憩スペースだけでなくイベントにも使用できるようになっています。この余白により回遊性が高まり、今後さらに都市インフラとして価値のある場所に成長していくことが期待されています。
通な大人が集う
ショップのデザイン
この調和のとれた空間には、個性的なショップのデザインが映えます。日比谷OKUROJIには、大人の隠れ家にふさわしい上品かつこだわりのショップが並びます。日本にアメリカントラディショナルスタイルを浸透させた「ヴァンヂャケット」の新たな旗艦店「VAN SHOP」もその一つです。車田店長にお話を伺いました。
「VANのお客様はそれぞれのライフスタイルが確立していて、抜け目のない大人、というイメージの方が多いです。この日比谷・銀座地区の奥とも言える通な場所はまさにVANにぴったりです。店の奥に設けたパターンオーダーを承る場所は、日比谷店ならではのスペース。日比谷OKUROJIのコンセプトに共感してこのスペースをつくりました。レンガの壁がある内装でお客様にくつろいでいただける自慢の場所です。」
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高架下施設が合同で開催したドイツフェア
~まちづくりの役割~
有楽町駅―新橋駅間と神田万世橋の高架橋の建設にはドイツ人技師が深く関わりました。今年2021年が日本とドイツの国交160年にあたることから、レンガアーチの高架下施設が合同でドイツフェアを開催しました。期間中、日比谷OKUROJI各ショップではレンガをイメージした商品の販売やドイツにちなんだ料理の提供のほか、車の展示も実施しました。
このように、日比谷OKUROJIは結節点に位置する商業施設として、この地域のまちづくりをすすめる中心的な役割を担っています。このようなまちづくりの活動がひとつひとつ積み重なって、次の時代、次の100年へとつながっていきます。


・施設名称 日比谷OKUROJI
・所  在 東京都千代田区内幸町一丁目7番1号
・営業時間 店舗毎に異なりますので、
      公式HP又は店舗までご確認ください
・アクセス JR有楽町駅 日比谷口  徒歩6分
      JR新橋駅 日比谷口   徒歩6分
      東京メトロ銀座駅   徒歩6分
      東京メトロ日比谷駅  徒歩6分
      都営地下鉄内幸町駅  徒歩5分

取材編集/くらしづくり・まちづくり室
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株式会社ジェイアール東日本都市開発 開発事業本部 開発調査部
大場おおば智子ともこ
学生時代に出会った2k540をきっかけに、単なるスクラップアンドビルドではなく街の風景を変えずに街を変える開発に興味を持つ。赤羽駅のショッピングセンターの担当を経て、社内公募していた日比谷OKUROJI開発チームに応募し、2016年よりチームの一員となった。「訪れた人が新しい発見や体験を得られる場を提供したい」という目標に、今日も店舗の誘致やSNS運用に邁進中。
学生時代に出会った2k540をきっかけに、単なるスクラップアンドビルドではなく街の風景を変えずに街を変える開発に興味を持つ。赤羽駅のショッピングセンターの担当を経て、社内公募していた日比谷OKUROJI開発チームに応募し、2016年よりチームの一員となった。「訪れた人が新しい発見や体験を得られる場を提供したい」という目標に、今日も店舗の誘致やSNS運用に邁進中。